My favorite ski resorts《月刊スキージャーナル2001年1月号》

10. Aspen (アメリカ)

 全米でも屈指の山岳リゾートといわれるAspen(アスペン)は、コロラド州の州都デンバーより西へ320kmのところに位置する。スキー場はアスペン・マウンテン、アスペン・ハイランド、バターミルク、そしてスノーマスと4つのエリアに分かれているが、これらを総称してアスペンと呼んでいる。中でも街にもっとも近く、最初に開発されたのがアスペン・マウンテン。標高2422m〜3418m、毎年ワールドカップが開催されることでも知られているが、中級者以上のコース設定しかないスキー場だけに、足前自慢のスキーヤーがやたら多いところとしても有名だ。

 アスペン・ハイランドは標高2440m〜3597m、コースレイアウトは初級者用23パーセント、中級者用48パーセント、上級者用15パーセント、エキスパートオンリーが14パーセントと非常にバランスがとれ、森林に囲まれた美しいコース群のスキー場として人気が高い。

 バターミルクは4つのスキー場の中では一番の穴場的存在で、標高は2399m〜3018m。規模がちょっと小さく、急斜面が少ないのがおもな要因だが、エキスパートスキーヤーには物足りなさがあるため、逆にいつ行っても新雪にありつけるという利点がある。また、ここには有名なテニスコーチで、スキーの分野でも科学的アプローチを実践しているヴィック・ブレイデン氏が主催するスキーカレッジがあるのも見逃せない。 各スキー場のスキースクールともそれぞれに優秀なスタッフを揃えているが、ここでの「売り」は室内でのビデオレッスン。身体の物理的な動きとターンのメカニズムとの関係をさまざまなビデオを用いてわかりやすく説明してくれる。

 このエリアの中で、もっとも若いのがスノーマス。標高2505m〜3607m、中級者用コースが全体の62パーセントを占め、ロンゲストランは62パーセント。このスキー場において特筆すべきは、なんといってもゾーニングのうまさ。駐車場と建物群がゲレンデの横に階段状に配置され、スキーインとスキーアウトが容易なだけでなく、チケット売り場やレンタル、ショップ、レストラン等も「歩く苦労」がないところに設計されている。
 スキー以外のアクティビティーも熱気球、犬ゾリ、クロスカントリーコース、スノーモービルコース、アスレチックジムなど長期滞在しても飽きないメニューが揃っているが、その中でも、わが国ではめったにお目にかかれないのが熱気球。高度500mで約1時間の空中散歩はアメリカンロッキーの雄大、かつ穏やかな山並みが堪能できる。私見として言わせていただくなら、人間の個としての小ささを自覚させると同時に、新たなる勇気を与えてくれるようなスポーツ、それが醍醐味かな、と僕自身は思っている。

 エグゼクティブ御用達のスポーツクラブ「アスペンクラブ」もまたアスペンが誇る施設のひとつ。スポーツ心理学の権威であるジュリー・アンソニー博士の指導のもとに会員制で運営されていて、室内テニスコート3面、屋外テニスコート7面、ラケットボールコート6面、スカッシュコート3面、ウェイトトレーニングルーム、エアロビクススタジオ、バスケットボールコート、バレーボールコート、各種ジム機器、そして室内温水プールを完備している。これだけなら大した驚きもないのだが、アスペンクラブのすごさはインストラクターのレベルの高さ。会員それぞれの体調や運動能力に合わせたレッスンメニューが完璧に組まれている。まさに「健全な精神は健全な肉体に宿る」 を、ここまで高度なレベルでクリニックしてくれるクラブは少なく、全米のエグゼクテイブやプロスポーツ選手の多くからも愛されている。ディズニーランドも同様だが、「本物を創造するこだわり」に徹底することがいかに大切で、その結果のクチコミが巨大な営業力となって健全経営に寄与するかを、このクラブのスタッフも一様に熱く語っている。

 アスペンの街を歩くと歴史感と斬新さとが微妙に調和していることに気づく。1920年代までは銀鉱山として栄え、そのころをしのばせる赤レンガ造りの建物やヴィクトリア調の邸宅などが残る街並が歴史の重さを強調すれば、一方でポストモダン調のショップ群やコンドミニアム群はポリシーを変えずしてアグレッシブなスキーリゾートに生まれ変わったことを主張している。
 国際的な会議やコンサート、セミナーなどのイベントも頻繁に開催され、毛皮専門店や一流レストランの多さからもハイブローなリゾートとしての貫禄は充分に感じ取れるが、空港で翼を休めている自家用ジェット機の数を見ると、その証を一段と納得させられる。
 枯渇した銀鉱山の街から世界の山岳リゾートへの道のりは決して順風満帆なものではなかったが、知恵とフロンティア・スピリッツが結集した街づくりの見本として、また日本のスキー場業界が抱える課題の解決指針として、アスペンから学ぶことは極めて多い。