My favorite ski resorts《月刊スキージャーナル2000年12月号》

9. Grindelwald (スイス)

 名峰アイガー(3,970m)を中心にヴェッターホルン(3,701m)、シュレックホルン(4,078m)、メンヒ(4,099m)、ユングフラウ(4,158m)など、スイスアルプスの中でももっとも絵画的な美しい風光に恵まれているといわれる山域の中心地がGRINDELWALD(グリンデルワルト)だ。チューリッヒより195kmに位置し、人口はわずか3,850人。別名「氷河の村」とも呼ばれ、村の背後では数々の氷河が神秘的な輝きを放っている。

 1854年にヴェッターホルン、1858年にアイガーがイギリス人のアルピニストによって初登頂され、この地の名が知られるようになったが、グリンデルワルトが一大飛躍を遂げたのが1912年。この年にアイガーとメンヒの岩にくり貫かれたトンネルを通り、標高3,454mのユングフラウヨッホまで繋がる登山鉄道が14年の歳月をかけた工事の末に開通した。一寒村に過ぎなかった岩峰と氷雪の里は、これを機に世界中から注目を浴びる山岳リゾートへの順風な道を歩み始めた。

 スキーコースは大別して3つのエリアに分かれており、コース全長は約200km。メインは標高2,061mのクライネシャイデック周辺。グリンデルワルト駅から登山鉄道で40分。前述の山々が一段と美しく見える景勝地で、コース群もバラエティーに富んでいる。また、ここからラウバーホルン(標高2,472m)までリフトで上がると、ワールドカップの3大クラシックレースのひとつとして有名なインナーウェンゲンまでのダウンヒルコースが開けてくる。それとクライネシャイデックまで来たら、電車を乗り換えてぜひともユングフラウヨッホ(所要55分)まで登ってほしい。ヨーロッパ最高地点の展望台からは長さ22kmにも及ぶアレッチェ氷河とユングフラウの勇姿が望め、それはまさに絶景で旅のクライマックスを感じさせるには充分にして余りある気分になる。

 足前に自信のある方ならシルトホルン(標高2,971m)がおもしろい。断崖の上に立つミューレン村からロープウェイを乗り継いで登った先には「ムムッ」とうなりそうな急なコブ斜面が待ち受けている。ここはまた映画「女王陛下の007」で大スペクタクルの舞台となったところとしても知られており、 50分かけて一周する展望回転レストラン「シルトホルン・ピッツ・グロリア」からは、遠くはモン・ブラン山群まで望見できる。

 一方、グリンデルワルトのタウンからもっとも近いのがフィルストのコース群。山頂部のオーバーヨッホからは初級者から上級者まで、レベルによってのお薦めコースが明確でわかりやすい。山頂からフィルストへのコースは平坦な一枚バーンで初級者向き、中級者はグローセ・シャイデック方面へ降るコースに手応えを感じそうだ。フィルストからエックに向かい、ボルトを経由してオーバーハウスへ降りるコースは急斜面が続き、緊張感の途絶えることがない。

 宿泊施設は5つ星から1つ星までホテルは50軒ほどある。豪華さでいえば5つ星の「レギーナ」。グリンデルワルト駅から徒歩1分のところにあり、フォーマルウェアが義務付けられているフレンチレストランがある。アイガーサイドの部屋はすべてバルコニー付きで、中華料理店やメキシカン・バーなどレストランが充実していると言われるのが「シュビンネ」。やっぱり日本人のスタッフがいてほしいと願う人なら「アイガー」がいいだろう。この中のレストラン「メモリー」では、うどんやトンカツ、焼き魚定食、おにぎりなど日本食メニューも豊富で、チーズ・フォンデュの食べ放題もある。なお、駅の北に延びるメインストリート「ハウプト通り」に面したベルン州立銀行の中には日本語観光案内所もあるので、食事やショッピングのことに関しては何かと頼りになる。

 僕のいる長野県の開田高原マイアスキー場では来たるシーズンに向けて、ゲレンデの中でもっとも景観のいい場所にパノラマ回転レストハウス「ティーホルン」をオープンさせる。レストハウス内部中央に位置する座席が回転し、座っているだけで御岳、乗鞍、木曽駒などの眺望が順に楽しめる遊園地感覚のブレイキングスポットだ。企画・設計にあたっては、これまで自分が歩いてきた世界のスキー場のいろいろな建物を思い起こしてみたが、最終的に参考にさせていただいたのが今回紹介したシルトホルンだ。雪質、景観は申し分なく、毎週がお祭りイベント。今シーズンはクジラ? も登場するマイア。読者諸氏のご来場を心よりお待ちしております。