My favorite ski resorts《月刊スキージャーナル2000年7月号》

4. Whistler&Blackcomb (カナダ)

 PSIA(アメリカ職業スキー教師連盟)の会員であることから、毎年SNOW COUNTRYという雑誌が発行されるごとに僕の手元に届く。北米を中心としたスノーマガジンだが、その雑誌のランキングで、ここ4シーズンに渡り人気NO.1の座を保持しているのがカナダのWHISTLER&BLACKCOMBだ。
スキー場開発の根底に「街づくり」があることは、第1回のVAIL(アメリカ)でも紹介したが、山岳リゾートタウン形成に必要な素材条件のポテンシャルとしてはこちらに軍配があがる。

 バンクーバーの北120キロに位置する両スキーリゾートは、まず1966年にWHISTLERがオープン。当初は地元の人が週末にチラホラやって来る程度だったが、70年代に入るとカナダナショナルチームのコーチだったアル・レインや、その妻で68グルノーブルオリンピックGSチャンピオンのナンシー・グリーンなどが注目し、その後ダイナミックなスキー場開発が始まった。

 1980年に隣接するBLACKCOMBがオープンしてから開発は拡張の一途を辿り、いまや自他ともに認める北米屈指のスキーリゾートに成長している。両エリアのゲレンデ概要は、標高675メートル〜2,284メートル(標高差1,609メートル)、ゴンドラ・リフト合わせて32基、コース数200以上(初級20%、中級55%、上級25%)、それに加えて12カ所のボウル(すり鉢型の新雪エリアで、このうち3カ所は氷河)、最長滑走距離は11キロ。中級者以上の人なら、カナダならではの壮大なヘリスキーも存分に味わえる。  

 そのほか、バックカントリー・アドベンチャーと称してのスノーボードやスノーシュー、スノーモービルのツアー、湖と山々に囲まれた28キロのクロスカントリーコース、パラグライダー、馬ソリ、アイススケートなどがおもな冬のスポーツ・アクティビティといったところだ。

 両スキーエリアの中心には合理的に生活空間を演出する街「ウィスラーヴィレッジ」がある。ホテル、コンドミニアム、マーケット、銀行、郵便局、映画館そして各種ショップやレストランなどが整然と並んでいるが、施設ゾーニングや建物の色調センスに視点をおくと、ただ単に並べているのではない。滞在する側の身になった細かい配慮が随所に施されていることに気づく。都市計画的見地からみても、ここでは詳細は控えるが相当にレベルの高いものである。

 昨年の10月に現地ディベロッパーの友人から、「今シーズンはヴィレッジのノースに日本流の回転ズシとしゃぶしゃぶレストランがオープンするし、一段と広がったから遊びに来いよ」と連絡が入ったが、開業以来、街並は着実に広がりをみせ、衛星的なコミュニティが次々と開発されている。

 ここ数年の入場者数は約120万人と言われ圧倒的に多いのはアメリカ人だが、日本人客が21〜22%も占めている。航空料金のダンピングや格安ツアーの影響もあるだろうが、それだけ魅力的なエリアだということはまちがいない。食に関してもシーフードはもちろんのこと、イタリアン、フレンチ、メキシカン、中華、和食……etcと文句ナシ。  

 一方、夏のWHISTLER&BLACKCOMBを愛する人たちも、冬に負けず劣らず多い。氷河でサマー・スキー(スノーボード)が8月まで満喫できることもあるが、山岳リゾートの中では類をみない広大な平地と恵まれた水資源によって、グリーンシーズンのアクティビティの充実ぶりにも目を見張るものがある。ゴルフ場がまず4カ所、それもゴルフ場設計の“神様”ロバート・トレント・ジョーンズ・ジュニアがデザインしたシャトー・ウィスラーゴルフコースをはじめ、アーノルド・パーマー、ジャック・ニクラウス、ロバート・カップなど、超一流が設計したものばかり。ゴルフダイジェストの評価も当然のように高く、「単にスキー場に隣接してゴルフ場もあります」という日本のレベルとは数段違う。また乗馬、テニス、マウンテンバイク、ATV(オフロード用バギー)、ロッククライミングなどの陸上施設もさることながら、前述したようにアルタレイクを筆頭とする5カ所の湖やグリーン、リロエット川なども含めた豊富な水資源によってラフティング、ジェットボート、カヌー、カヤック、ウィンドサーフィン、ウェイクボード、フィッシング、水上スキーなどのウォータースポーツが楽しめる。加えて、ヴィレッジ内ではジャズやクラシックのコンサート、外車ショー、各種ゴルフ・テニス大会、マウンテンバイクレース、絵画展、ワインフェスティバル、「ストリート・エンターテイメント」と称しての手品や曲芸パフォーマンスなど、毎週なにかしらのイベントが開催されており、集客のための閉塞期間がない。

 プランニング段階から、資金調達、許認可取得、経営現状、将来ビジョンに至るまで、山岳リゾート開発の末端で働く自分自身にとっては、世界の中でもっとも興味をそそられる「物件」のひとつであり、今後どのように変貌していくのか?  WHISTLER&BLACKCOMBからは、片時も目が離せない。